2011年3月9日水曜日

福祉ナビ:色覚障害者に配慮したカラーユニバーサルデザインとは。

◆色覚障害者に配慮したカラーユニバーサルデザインとは。

◇色数絞りシンプルに 案内表示、電子掲示板…公共施設で普及進む

 地図、乗り換え案内、電子掲示板……。街にはさまざまな色の表示があふれているが、色を区別しにくい人にはかえって分かりづらいこともある。そこで注目されているのが、色覚障害があっても情報が伝わるように配慮した「カラーユニバーサルデザイン」(CUD)だ。公共施設などで取り入れる動きが広がりつつある。

 東京都足立区の男性会社員(36)は、銀行や病院の窓口にある番号呼び出し機の数字が読み取れない。一般的な呼び出し機は黒いボードの表面に赤い光で数字が点灯するが、赤と黒を識別できない障害があるため、数字と背景の違いが分かりにくいのだ。

 こうした住民の声を受け、区は09年、庁舎内の住民票窓口などにある表示機を数字が白色に点灯するものに変えた。男性は「これまでは自分の番号が来るまで機械の呼び出し音にずっと注意していなければならなかった。小さいことだが助かる」と話す。

 足立区は08年以降、公共施設や住民サービスに順次CUDを導入している。その一つが防災マップ。以前は多くの色を使って避難所の区域を示していた。一般の人には見やすかったが、色覚障害のある人は紫とピンクの違いが分からず、緊急時に役立たない可能性があった。現在のマップは4色に絞り、白抜き文字なども多用して見やすくした。

 昨春開校した足立区立の小中一貫校「新田学園」では、校内の案内表示板の配色をシンプルにし、現在位置だけをオレンジ色にして、白抜き文字で「現在地」と表示。トイレの位置も分かりやすくした。区学校施設課は「使う色をできるだけ減らし、知りたい情報が浮き出るようにデザインした」と説明する。

 また、「学校の黒板の文字は白や黄色の見やすい色を使う」「カラー印刷物は明るい色同士、暗い色同士の配色を避ける」など、CUDを行政サービスに生かすための25項目のチェックリストを作成。職員らに徹底を求めている。

 視覚障害のマークは「太陽」、聴覚障害は「鳥」、知的障害は「葉っぱ」--。今年4月に開校する神奈川県立相模原中央支援学校(相模原市)では、教室のドアを障害別に色分けするとともに、それぞれにシンボルマークをつけ、色覚障害がある子にも分かるよう配慮している。田中宏明教頭は「どんな障害があっても生活しやすいように工夫した」と話す。

 神奈川県は09年に「みんなのバリアフリー街づくり条例」を制定。業者が病院やホテルなど公共性の高い施設に標識などを設ける際、県と事前協議することを義務付けた。

  しかし、こうした自治体はまだ少数だ。NPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構」の田中陽介事務局長は「CUDを担当する部署が福祉なのか都市計画なのかはっきりしないことも一因だ。先進的な自治体を参考に、行政組織の中で横断的に取り組んでほしい」と指摘する。

 民間の取り組みは公共交通機関を中心に進んでいる。大阪と神戸、京都などを結ぶ阪急電鉄は昨年3月のダイヤ改正で、駅に掲示する時刻表案内板にCUDを導入した。

 これまでの同社の時刻表は、特急の出発時刻を赤色、準急を緑色にしていたが、色覚障害がある京都市の白浜徹朗弁護士(51)が「赤と緑が区別できない」として、京都地方法務局に人権救済を申し立てた。これを受け、同社は見分けやすい色調に変えた。

 白浜弁護士は「私の場合、見づらいものは人間が作り出したものが多い。作り手が見やすいものを作るように配慮するだけで、世の中はもっと暮らしやすくなるのではないか」と話す。

 都交通局でも大江戸線など4路線で、運賃の掲示板を色弱者が分かりやすいものに交換している。【中西拓司】

 ◇先天性の色覚障害、男性の20人に1人

 先天性の色覚障害は男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合で起きると言われている。障害の程度が重く視界全体がモノクロに見えている人もいるが、大半の人は複数の色が組み合わさった時に識別しにくい程度という。

 東京女子医大非常勤講師の中村かおる医師(眼科)によると、見えにくくなるのは、例えば(1)赤と緑(2)緑と茶色(3)青と紫--などが隣接した場合という。中村医師は「自分の見え方の特徴を把握しておくことも大切だ」と指摘する。

2011年3月9日付(毎日新聞)

続きは・・・http://mainichi.jp/life/health/fukushi/news/20110309ddm013100179000c.html

0 件のコメント: