2010年2月18日木曜日

拡張型心筋症に新療法、心臓移植待つ患者に光明

免疫吸着法 臨床試験始まる

 心臓移植以外に根本的な治療法がない重症の拡張型心筋症について、患者の血液から病気を引き起こす抗体をフィルターで取り除く、新たな治療法が注目されている。
 主治医に「移植しかない」と言われた患者が劇的に回復する例もあり、今月、北里研究所病院と慶応大病院で重症患者(18歳以上)への臨床試験が始まった。他の6医療機関でも順次、臨床試験を実施する。
 この治療法は免疫吸着療法と呼ばれ、慢性腎不全の透析治療のように、血液から特定の成分を取り除いて浄化する。拡張型心筋症は、風邪などのウイルス感染で免疫機能に異常が生じ、本来は体を守る抗体が、心臓を異物と誤認して攻撃することが一因と考えられ、抗体を取り除く免疫吸着療法の効果が期待されている。
 ドイツなど欧米では200人以上が治療を受け、重症患者の2年後の生存率が約60%から約80%に上昇したとの報告もある。国内では、重症筋無力症などの治療として既に行われており、今回の臨床試験には、東大、国立循環器病センターなども参加している。
 北里研究所病院は試験に先立ち、重症の8人に治療を実施。3か月後、5人の心臓のポンプ機能が改善した。医師に「心臓移植を考えてほしい」と言われた20歳代の男性患者は、一昨年、この治療を受けて回復し、社会復帰した。「ひどい息切れで歩くこともできなかったのに、今は通勤や事務仕事もできます」と話す。
 同病院循環器内科の馬場彰泰副部長は「心臓移植まで長く待機を強いられても、希望をつなげる。早期の保険適用を目指したい」と話す。問い合わせは、北里研究所病院治験管理室((電)03・5791・6354)。
 拡張型心筋症 血液を送るポンプ機能が著しく低下する難病で、患者数は約1万8000人。国内で心臓移植を待つ患者の6割がこの病気を患っている。心臓移植は1997年の臓器移植法施行以後、先月末までに70例(1例は心肺同時移植)にとどまり、移植を望みながら亡くなる患者が少なくない。
2010年2月18日付(読売新聞)

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