2010年10月14日木曜日

チリ大統領、奇跡に「便乗」?支持率急上昇

【コピアポ=浜砂雅一】チリ北部コピアポ近郊の鉱山落盤事故で、ピニェラ大統領は13日、救出作業の現場で自ら指揮を執り、カプセルから出た作業員を一人一人たたえて存在感をアピールした。
 メディアを最大限に使って、国内外で注目を集める救出劇を政権の求心力拡大に役立てようとする思惑が濃厚だ。
 大統領は、「奇跡の生還」第1号の作業員フロレンシオ・アバロスさん(31)がカプセルから出ると強く抱きしめた。救出された作業員は当初、ただちに仮設診療所に運ばれる予定だったが、大統領は、アバロスさんの7歳の息子の望みを聞いて家族がすぐ対面できるよう計画変更したと明かし、人情味をのぞかせた。その上で、「我々は偉業を達成できる」と鼓舞した。
 救出に要した費用は明らかにされていないが、救出穴の掘削やカプセル導入に要した費用だけでも数千万ドルに上ると見られる。当初、「クリスマス頃」と予想された救出作業が1か月以上早まったのも、政府が多大な費用を投入して、米国などから最新の掘削機を取り寄せたのが功を奏した。
 大統領は、8月22日に作業員33人の生存が確認された直後から、救出作業の陣頭指揮に立ってきた。長年、テレビ局を経営してきただけに、テレビを徹底利用した。坑内から「みんな元気だ」と告げる作業員のメモが発見されるや否や現場に駆けつけ、テレビカメラの前で、メモを勝ち誇ったように振りかざした。掘削ドリルを現場に運び込む際には、チリの国旗で飾った。作業員の妻に子供が生まれると、生後数日の乳児を抱いてテレビの前でキスし、「結束と信頼、国民としての誇りが坑内にあふれている」と作業員らをたたえた。
 その効果は明らかで、9月初めの大統領の支持率は56%にのぼり、救出作戦が始まる前より10ポイント上昇した。大統領は世界中から集まった1000人近いメディアのために、鉱山にインターネットを引いた。
 米CNNテレビによると、13日、作業員の家族から、大統領による救出劇の「政治利用」に不満を漏らす声も出た。救出された作業員の妻は「政治家は成果を誇示したがる。ただ、みんなを助けてくれればいいのに」と話した。
 ピニェラ大統領は今年3月に就任した。テレビ局経営などで富を成し、1990年の民政移行後、初の右派大統領となった。就任直前に400人以上の死者を出す大地震が発生。国内の経済が打撃を受け、復興が最大の課題となっていた。
2010年10月14日付(読売新聞)
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101014-OYT1T00194.htm

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