2008年6月3日火曜日

教育ルネサンス シリーズ

特別支援
(10)[読者の声]「理解されない」嘆き

 読者から連載に共感する声が相次いだ。
 学習障害を自ら公表した教師の記事(24日付)に、「同じようなことを思う人がいたんだと心に響いた。子供たちに勇気を与える告白」と兵庫県の村上愛さん(24)。人と同じことができずにコンプレックスを感じ、中学まで不登校だったが、自分が発達障害の可能性が高いと分かり、記事と同様、頭の中のもやが晴れたという。療育の現場でそうした子を支えたいと、臨床心理士を目指して勉強中だ。
 大阪府内の中学校で特別支援教育コーディネーターを務める志村克己さん(55)は、現場では人も金も足りないと指摘する。専門図書の購入費、研修会の参加費など、この5年の持ち出しは100万円近く。「生徒のために特別支援教育を進めようとすればするほど、教師の物心両面の負担が増える仕組みになっている」
 発達障害の子を持つ奈良県の母親(40)は、教師や保護者の理解の低さを嘆いた。学童保育の指導員から障害に関する個人情報をほかの保護者に漏らされるなど、つらい体験を重ねてきた。「障害を理解せず、差別的言動をする教師や保護者に傷つけられた親は少なくない」
 このほか「特別支援教育に意欲的に取り組む学校はまだ一部」との不満が、多くの親から寄せられた。
 誰もが発達障害を正しく理解し、子供の個性として尊重できるような教育が必要とされている。
就労へ「まず長所ほめて」
 「卒業後の就労を見据えた支援を」。「LD親の会けやき」副会長の新堀和子さん(56)(東京都八王子市)が強調するのは、このことだ。
 集団生活になじめず、席に座っていられない--長男(31)は小学4年生になる直前、学習障害(LD)と診断された。ショックだったが、どこかほっとした部分もあった。「1歳を過ぎたころから抱き続けてきた悩みに答えが出た。『これからは社会性の勉強だ』という主人の言葉が胸に響いた」
 6年生から2年間、福島に山村留学させた。本人も希望したが、寮生活でいじめに遭う。どんなに努力しても漢字が書けずに悩む姿を見かね、学習障害だと伝えたのは中学2年。「障害だからできないんだよ」とふてくされ、しばらくは荒れた日々が続いた。
 専修学校を出て、自動車整備士として小さな会社に就職。発達障害は隠していたが、相手の表情を読めず、約1年で退社した。肩を落とす姿を見て、「障害者手帳を取ろうよ」と声をかけた。
 長男は今、一人暮らしをしながら派遣会社で働く。趣味のカメラを楽しみ、手話サークルにも参加する。「自分を障害者だと思っているわけじゃない。でも、手帳を持つことで助かっている。こんな生き方でもいいんじゃないかな」。そう話す長男を頼もしく感じる。
 発達障害の子の就労問題については、まだ手が着いていないのが現状。企業がもっと積極的に支援にかかわるべきと要望する。「特別支援教育という形はできあがったが、中身を充実させていくのはこれから。まずは子供のよい所を見つけてほめ、自己肯定感を高めてあげてほしい。そうすれば子供は自信をつけていくから」聞き手・保井隆之
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080531-OYT8T00206.htm
2008年5月31日付(読売新聞)

特別支援
(9)共感生む 学び合いゼミ

星槎大学のスクーリングでは学生の自己紹介が延々と続いた(横浜市で)
 ハンデのある学生も、ハンデのある子の親も一緒に学ぶ大学がある。
 自己紹介が、昼休みをはさんで延々と続いた。今月11日の日曜、通信制の星槎(せいさ)大学の横浜市内にあるスクーリング(面接授業)会場に21人の学生が集まった。丸1日続くプロゼミと呼ばれる授業だった。
 自己紹介の目的は、各自の経歴や抱負を聞いた上で、7月に提出するリポートのテーマを決めることだ。21人中16人までが女性で、年齢層は10代から60代までと幅広い。自己紹介で明かされる個々の複雑な事情に、担当の高津茂・准教授(58)が丁寧にコメントしていく。
 中でも目立つのは、発達障害の子供を育てた母親と、不登校など、紆余曲折(うよきょくせつ)を経て入った大学の系列校、星槎国際高校出身の若者だ。
 「小学生の子供の発達障害のことを、実はよくわからないで育ててきました」と元看護師の女性が体験談を交えて告白、別の母親が共感の涙を流した。
 鈴木達也さん(19)は、星槎国際高校に入る前、別の高校に入学して数日でいじめを受け、うつ病に苦しんだ経験を持つ。「僕は星槎に救われた人間です。カウンセラーか星槎の教師になりたい」。今度は高校の校長を兼ねる高津准教授が「うれしいねえ」と涙ぐんだ。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080530-OYT8T00225.htm
2008年5月30日付(読売新聞)

特別支援
(8)弱視教育 LD児に光明


 弱視教育の指導法を、学習障害(LD)児に応用している盲学校がある。
 たくさんの図形が描かれた絵の中から、三角やひし形などを見つけ出し、色鉛筆で塗っていく。北海道旭川盲学校(旭川市)の教室で、小学2年生の陸君(仮名)は、黙々とドリルをこなしていた。
 陸君が取り組んでいたのは視覚認知のトレーニング。漢字の部首など、細部の形に注意が向くようにするのが目的だ。元々は弱視教育のために考案された指導法だが、読み書きが苦手なLDの子にも有効だ。
 近くの小学校の通常の学級に在籍する陸君は算数は得意だが、国語が大の苦手。ひらがなの「あ」など、線がたくさん交差した字が上手に書けない。昨年末から月1回のペースで放課後、旭川盲学校の教育相談へ通っている。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080529-OYT8T00244.htm
2008年5月29日付(読売新聞)


特別支援
(7)入学前に園児個別指導

 円滑な就学のため、幼児を通級指導する小学校がある。
 エアコンがよくきいた個別指導の教室。体温調節が苦手な幼稚園年長の太陽君(仮名)はひんやりした空気が流れる中、ピンセットで同じ色の小さい玉をつまみ、ビニール袋に詰める作業に没頭していた。
 課題を上手にやり終えるたび「イェーイ」と声を上げながら、相川陽子教諭(52)とハイタッチを交わす太陽君。ごほうびのゲームをねだると、「負けることもあるんだから、勝てなくても怒らないんだよ」と相川教諭がやんわりとくぎを刺した。
 群馬県館林市立第二小学校で行われる情緒障害学級通級指導教室の幼児部の授業。相川教諭はその専任だ。集団行動が苦手で、ゲームには勝たないと気がすまない太陽君は週に1回、幼稚園が終わった後、ここに通っている。
 指導は遊びも上手に取り入れながら、集団生活でのルールを身に着けられるようにしているのが特徴だ。様々なおもちゃに目移りする太陽君に、「時間は限られているから、やりたいものを考えて決めるんだよ」と、黒板に掲げた時計の絵を指す相川教諭。「約束や時間を守れるようになり、集団生活にも適応できるようになってきた」と、同席する母親に笑顔で報告した。

続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080528-OYT8T00204.htm
2008年5月28日付(読売新聞)

特別支援
(6)席の隣で苦手サポート

 
 発達障害の子供を教室で支える仕組みが広がる。
 机に置かれたキュウリの苗に、真剣なまなざしが注がれる。葉っぱを裏返したり、においをかいだりしながら、気づいた点をノートに記していく子供たち。「発表したい子はいますか」との担任の言葉に、真っ先に手を挙げたのは拓也君(仮名)だった。
 「葉が緑。ざらざらしている……」とノートを読み上げていく拓也君。「葉がアリに食べられやすい」との発言に、「アリは葉っぱを食べるんですか」と質問が出た。なかなか答えられないのを見かね、拓也君の横についていた特別支援教育支援員の女性(45)が「ギザギザした形が、アリが食べたように見えたんだよね」と助け舟を出した。
 長野市立三本柳小学校の2年生の国語の授業。広汎(こうはん)性発達障害がある拓也君は対人関係を築くのが苦手で、漢字の勉強が不得意だ。4月から支援員がサポート役として授業に入る「入り込み指導」が行われている。
 「授業が分からないと教室から出ていってしまうこともあった。隣について指示を出してもらうと、集中して意欲的に取り組む」と担任。支援員も「気づいた点がたくさん書けたので満足していた。集団の中での支援なので、トラブルが起きた時の、ものの言い方も教えられる」と話す。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080527-OYT8T00199.htm
2008年5月27日付 (読売新聞)

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