2008年6月14日土曜日

後期高齢者医療  「問責」より党首討論を

 「国民をミスリードした」。あるいは「うそをついていた」と言われても仕方がない。
厚生労働省が公表した75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度の保険料実態調査の結果のことだ。
 国民健康保険から新医療制度に移れば、保険料は増えるのか、それとも減るのか-。
全体では69%の世帯が負担減になるというものの、所得の低い層ほど負担増になることが分かった。      これまで厚労省は、一般的には「低所得層は負担が軽くなり、高所得層は負担が増える」と説明してきた。  
 ところが、負担が増えた割合を年金収入別に比べると、年177万円未満の「低所得層」は39%だったのに対し292万円以上の「高所得層」は22%にとどまった。
 つまり、説明とはまったく逆で、制度の根幹をも揺るがしかねない結果といえる。  比較の際に採用した健康保険料の算定方式などに問題があり、実態を正確に伝えていないとの指摘もある。  
 与党は低所得層の保険料を九割軽減するなどの見直し案をまとめたが、実態があいまいな中では、どれだけ救済効果があるのか、はっきりしない。  
 小手先の修正では、お年寄りや国民の間に広がった不信感をぬぐいさることはできない。ここは、いったん立ち止まって考えるべきだ。  
 ねじれ国会の下、野党は廃止法案を参院でスピード可決させ、衆院に送ったが成立する可能性はまずない。  
 法案自体も、来年三月末に新医療制度を廃止し、4月から元の老人保健制度に戻すのが趣旨で、廃案にした後の対案は示していない。  
 解せないのは民主党の動きだ。新医療制度廃止に応じないことを理由に、来週にも福田康夫首相への問責決議案を参院に提出する方針という。  
 待ってほしい。11日には小沢一郎代表と福田首相の党首討論が予定されていたではないか。  
 確かに、衆院の内閣不信任決議と違い、問責決議に法的拘束力はない。会期末(十五日)までの残り日数もわずかとはいえ、野党は審議拒否に入ることになり、党首討論は流れる。  
 福田政権との対決姿勢を強めるというのなら、問責決議ではなく、党首討論で、国会の場で堂々と渡り合ってもらいたい。小沢代表が不得手な討論を避けたとの声もあがっている。  
 高齢者医療について、どちらの考え方や施策に説得力があるのか、国民の判断を仰ぐべきだ。それでこそ、民主党が目指す責任政党といえよう。  
 一方で、与党は8日の沖縄県議選をにらんで見直しを急いだとされ、民主党も問責決議で党内の引き締めを図ったとの見方がもっぱらだ。何度でもいう。高齢者医療を政争の具にしてはならない。
続きは・・・http://kyoto-np.jp/info/syasetsu/20080607.html
2008年6月7日付(京都新聞)

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