2008年5月25日日曜日

教育ルネサンス  シリーズ

特別支援
(5)神山忠さんに聞く…読み障害を告白した教師
「一人」に合う授業目指す

 文字を読むのが苦手だった。紙に書かれた文字を見た時、白と黒のどちらに注目したらいいか混乱する。白いキャンバスの上に黒ごまや黒大豆がばらまかれているように見えてしまう。
 岐阜県関市の県立関特別支援学校教諭、神山忠さんは学習障害(LD)の一種、ディスレクシア(読み障害)だ。
 小学2年の道徳の授業が鮮明によみがえる。配られた読み物を各自で黙読する時間。左手の人さし指で文字を一つずつ指しながら、一向に頭に入ってこない文章を必死に読もうとしていた。
 「まだこんな所」。教師のひと言で、周囲の友達の視線が一斉に注がれた。「何やっとったんや、1時間」「おれなんか、2回目やぞ」。気がつくと大粒の涙がこぼれ、「もう本なんか読まないぞ」と心に決めた。
 読みやすいよう、赤ペンで単語ごとに斜線を入れる分かち書きをしたら、「教科書を粗末にするな」と怒られた。3時間練習してから授業に臨んでも、つまりながらしか読めず、「努力が足りん」と頭にチョークで×印を書かれたことも。「自分はばかだと劣等感ばかりが募っていった」
 教師や友人からもぞんざいな扱いを受け、「自分は生きていてはいけない人間なのではないか」と思うようになった。自殺まで考えたあげく、ついに感情が爆発して教師に手を上げた。荒れた学校生活の始まりだった。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080524-OYT8T00214.htm
2008年5月24日付(読売新聞)

特別支援
(4)違い認めて 伝える工夫
 発達障害を個性の一つとして尊重することが特別支援教育の理想だ。
 中学に入学したばかりの主人公が、校長先生からマナーについて教わり、翌年は新入生に教える大役を務めるという物語。「中学マナー」とタイトルの付いた紙芝居は、静岡県三島市立北中学校の岡山一夫校長にとって、思い出深い作品だ。丁寧なタッチのイラストの裏に、原稿用紙に書いた文章が添えてある。
 作者は卒業生の大樹君(仮名)。高機能自閉症があり、人とかかわるのが苦手だった。そんな彼が、対人関係の基礎を磨くソーシャルスキルの訓練とともに、クラスメートと一緒に取り組んだのが、同中が特別支援教育を推進するため取り入れた「コミュニケーションタイム(CT)」だった。
 担任の合図で一斉に机を向かい合わせ、男女混合の班ができる。手元には、来年の修学旅行で訪れる奈良の地図。2年生の授業のテーマは「待ち合わせ」だった。担任からこっそり場所を告げられた生徒が、駅からの道順を言葉だけで説明。何人に伝わったかを体験する。
 「同じ説明でも、通じる人と通じない人がいることが分かった」と加藤友貴子さん(2年)。寺田裕子教諭(39)は「伝える、伝えられるの両方を体験することによって、人それぞれの反応があり、たとえ伝わらなくても片方だけが悪いのではないことを知ってほしい」と狙いを語る。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080523-OYT8T00228.htm
2008年5月23日付(読売新聞)

特別支援
(3)成長促す「個別指導計画」
 発達障害の子を支援するには綿密な指導計画が必要だ。
 壁につるされたバインダーを取り、児童たちが席に着く。とじられた紙には、授業のスケジュールが順番に記され、見通しを持って学習に臨めるよう工夫されている。
 大阪府高槻市立五領小学校の特別支援教室で行われる生活単元学習の時間。この日取り組むのは、6月のカレンダー作りだ。
 落ち着きのない子が目立つ中、黙々と作業に没頭していたのは小学6年の健太君(仮名)。白い画用紙に丁寧に暦を書き込んだ後、折り紙に器用にはさみを入れて作ったアジサイの花を張りつけていく。時間内にきっちりとカレンダーを完成させた健太君は満足そうに笑みを浮かべ、通常の学級へ帰っていった。
 軽い知的な遅れがある健太君は、通常の学級で授業を受けながら、特別な教育課程による指導を特別支援教室で受けている。そんな彼を支えていくため、教師や親が一緒に作り上げているのが、個別の指導計画だ。
 健太君の場合、教科・領域ごとの年間目標に加え、半年ごとに見直される短期目標は60項目にも及ぶ。特別支援教室担当の結城越代教諭(50)は「個別の指導計画を作ることで、通常の学級と特別支援教室でそれぞれ指導することが明確になった。子供と短期目標を確認しながら授業を進めると、頑張る目安ができて子供が意欲的になる」。
 「学年ごとに覚える必要のある漢字が書けず、手先が不器用で、勉強も投げやりな子だった。本当に成長した」と結城教諭。短期目標の積み重ねによる着実な成長を、肌で実感する日々だという。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080522-OYT8T00237.htm
2008年5月22日付(読売新聞)

特別支援
(2)見直される巡回指導

 支援を必要とする子供がいる学校を、教師が巡回して指導する。
 教室に並ぶのは、風船、シャボン玉、ウエハース……。一見、ただのおもちゃとお菓子だが、発音が正しくできない構音障害では、一定の強さで息をはき出し続けたり、歯茎の裏につけて舌を動かしたりすることが、立派な訓練になる。
 愛知県岩倉市ことばの教室。小学3年の大輝君(仮名)は、言語障害などを対象にした通級指導を、週に1時間受けている。
 自分の学校にある教室や、他校に通うのではなく、担当教諭が訪問してきてくれる形態が多いのが愛知の通級の特徴だ。担当の奥村寿英教諭(46)が受け持つのは、市内にある全5小学校。「曜日ごとに違う学校を回り、本務校の岩倉南小にいるのは週に1日だけ」と笑う。
 個別指導の部屋で奥村教諭と向き合うやいなや、大輝君は大好きなスポーツの話を早口で語り始めた。「あの選手の出身地は……」「あの時の成績は……」。その記憶力には感嘆するしかない。だが、発声や音読の練習に移った途端、口調は急にたどたどしくなった。「発達のアンバランスさが目立つ。興味・関心にも一種の偏りがある」と奥村教諭。
 ことばの教室に通う児童にここ数年、学習障害(LD)など発達障害の子が増えている。言葉をコミュニケーションの手段として使うのが苦手なのが、こうした子供の共通点だ。大輝君も言葉の裏や空気を読むのが苦手で、クラスメートとのトラブルが絶えなかった。それでも、イラストに描かれた人物の気持ちを考える訓練などを重ね、「少しずつ周りの状況が読めるようになってきた」と奥村教諭。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080521-OYT8T00179.htm
2008年5月21日付(読売新聞)

特別支援
(1)発達障害の子 個別に支える
 発達障害の子の教育ニーズに応じ、個別指導する教室がある。
 プレールームの窓から柔らかな光が差し込む。ゆったりとしたピアノのメロディーに合わせ、両腕をゆっくり真上に上げたり、四つんばいになって片腕と片足を同時に上げたりする子供たち。「よく努力しました」「とてもきれい」と女性教諭がよい所を見つけてほめていく。紅潮した子供たちの顔に次々と笑みが浮かんだ。
 東京都多摩市立の小学校。この日、周辺の学校の子供も加わる通級指導学級の自立活動のメニューは運動だった。「普通の体育とは違い、体と感情を上手にコントロールするためのトレーニングです」と説明するのは、障害児教育の経験が豊富な女性教諭。触覚や聴覚などの感覚に刺激を与えて脳機能の活性化を図る、発達障害を持つ子への指導法「感覚統合療法」だ。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080520-OYT8T00248.htm
2008年5月20日(読売新聞)

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