2009年10月18日日曜日

[解説]どう動く 障害者自立支援法

廃止が打ち出された障害者自立支援法に代わる、新制度の模索が始まった。自立した生活を支える安全網の行方が注目される。
 Q なぜ廃止されるのか。新制度の課題は。
 A 負担増への不満が高まったため。費用の増加が見込まれ、財源確保が課題。
 Q 障害者自立支援法とはどういうものか?
 A 障害を持つ人が、自分の生き方を選び、豊かな人生を送るのを支援する目的で、2006年4月に施行された。日常生活を支える「介護給付」と、障害者の就労をサポートする「訓練等給付」などが柱となっている。
 Q 導入の契機は?
 A それまでの障害者支援は、03年度に創設された「支援費制度」に基づいていた。障害者へのサービスを、行政によるお仕着せの措置から、利用者と事業者との契約に変えた点が画期的とされたが、サービス利用者が急増した結果、費用が膨らみ、予算が大幅に不足する事態となった。
 自立支援法は、財政問題を解消するために、障害者本人が受けたサービス費用の1割を負担する「応益負担」の仕組みを導入。知的、身体、精神といった障害の種別に縦割りだった支援内容を共通化して格差を解消するとともに、就労支援の強化を打ち出した。
 Q なぜ、民主党は廃止しようとしているのか?
 A 障害者や団体の間で、同法への不満や批判が高まっていたことがある。制度導入前には負担ゼロだった低所得層も費用の1割を支払うことになり、サービス利用を控えるといった弊害が生じた。サービス利用の回数を減らした人は8%に上るという調査結果もある。応益負担が憲法違反にあたるとして、障害者自立支援法違憲訴訟も各地で起きた。
 こうした批判を受け、自公政権は今春、同法の改正案を国会に提出したが、衆議院の解散により廃案に。一方、民主党はマニフェスト(政権公約)に、支払い能力に応じた応能負担を原則とする「障がい者総合福祉法(仮称)」の制定を盛り込んでいた。
 Q 新制度の課題は?
 A 応益負担から応能負担への転換など制度見直しにかかる費用を、民主党は400億円と見積もる。さらに、これまで、支援対象として明記していなかった発達障害、難病、高次脳機能障害なども含める方針だ。民主党障がい者政策プロジェクトチームの座長を務める谷博之参議院議員は「現在、障害者支援にかけている約1兆円の予算を、将来的には1兆5000億円程度にまで増やす必要がある」と話す。財源確保が大きな課題だ。
 Q 新制度へ向けた今後のスケジュールは?
 A 当面の措置として、来年度から低所得者の利用料を無料とする新たな軽減措置を導入する方針だ。新法制定については「1期4年の中で」(長妻厚労相)としており、本格的な議論はこれからだ。政権交代後に広島地裁で行われた違憲訴訟の口頭弁論では、厚労省は争わない姿勢を示し、原告団に新制度作りへの参加を呼びかけた。今後、鳩山首相を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」を設置、様々な障害の当事者を交えて、新制度の青写真づくりを進めるが、谷間のない公平な支援のあり方をめぐる論議が白熱しそうだ。(社会保障部 梅崎正直)
2009年10月18日付(読売新聞)
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kyousei_news/20091017-OYT8T00376.htm?from=nwlb

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