2009年5月24日日曜日

【あなたが裁く 裁判員制度スタート】視覚障害者の参加 模擬裁判で考える

 ■京都のイベントで開催へ
 裁判員裁判で重要な判断材料となる証拠品を見ることができない視覚障害者が、裁判といかに向き合うかを探るため、日本盲人会連合と京都府視覚障害者協会は、全盲者や弱視者を裁判員役にした模擬裁判を、25日に京都市で開く。制度では、視覚障害者の補助役をつけることは認められておらず、健常者よりも判断材料が少なくなることが懸念されており、府協会の田尻彰副会長(61)は「模擬裁判の結果を今後に生かしたい」としている。
 府協会によると、視覚障害者は現在全国で約30万人。このうち、少なくとも十数人が裁判員候補者に選ばれた計算になるという。
 しかし、現段階では「裁判員以外の人の主観が入ることを避ける」という理由から、視覚障害者が実際に裁判員に選ばれた場合でも、証拠品や法廷の様子などについて説明するアシスタントをつけることはできない。被告人の表情など視覚的な情報は、裁判官がその都度説明することになっているという。
 検察側から点字で配布されるのは起訴状と冒頭陳述、論告だけで、ほかの証拠品は点字化されない。自身も全盲の田尻さんは「健常者と情報の格差ができてしまうのではないかと不安」と話す。
 模擬裁判は25日午後5時半から、京都市北区の京都ライトハウスで、全国盲人福祉大会の記念イベントとして行われる。視覚障害者にとって何が必要かを考えるのが目的で、京都地裁や京都地検、京都弁護士会から裁判官や検事、弁護士も参加。それぞれ本物が裁判員裁判の法廷を再現する中、全盲者と弱視者、健常者が2人ずつ裁判員役を務め、京都地検が用意した事件のシナリオをもとに裁判を進める。
 裁判員裁判のスタートを目前に控え、視覚障害者の中には不安もあるが、田尻さんは「初めての制度なのでやってみないとわからない。問題のあったところは改善していけばいい」と意欲をみせている。
 模擬裁判の様子は、室内に設けられる「傍聴席」で一般見学することも可能。問い合わせは京都府視覚障害者協会(TEL075・462・2414)へ。
2009年5月23日付(産経新聞)
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/e20090523060.html

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