2007年12月15日土曜日

医療ルネサンス

在宅のデザイン 訪問看護

生きがい与える24時間ケア

 中小企業や庶民的な商店が軒を連ねる東京の下町、足立区千住地域。午後10時40分、公団住宅3階の部屋で、進行性筋ジストロフィーで身体障害1種1級の毎田順子さん(55)は、看護師とヘルパーが来るのを待っていた。

 毎田さんは、医師、鎌田實(みのる)さんが執筆する本紙のコラム「見放さない」(9月16日)で、この夏「ハワイでイルカと泳ぐ夢」を実現した難病患者として紹介された女性だ。

 全身の筋肉が委縮していく病気で、かつて医師に「寿命は27歳」と宣告された。両足は動かず、わずかに動く右手で電動車いすを操る。認知症の母親が入院し、昨春から独り暮らしだ。

 「お変わりないですか」。到着した地元の太郎山訪問看護ステーションの看護師、実方(さねかた)幸子さん(40)とヘルパーは、車いすの毎田さんをリフトに乗せて便座へ移した。シャワーでお尻も洗う。毎田さんを右向きにベッドに寝かせ、「お休みなさい」と言って電気を消した。

 約4時間後の午前2時25分。実方さんらは再び毎田さん宅を訪問し、し瓶で排尿を手伝い、体を上向きに変えた。寝返りが打てない毎田さんは、数時間ごとに体の向きを変える体位交換をしないと、床ずれになる恐れがあるのだ。

 医療法人「健和会」が、この「巡回型24時間在宅ケア」を始めたのは1994年。太郎山など同法人の三つの訪問看護ステーションが、同グループのヘルパーステーションと連携し、2人1組で患者を夜間も手厚く支えるシステムだ。末期がん患者や、重症で家族が「介護地獄」に陥りがちなケースにも対応する。

 「実方さんたちがいなければ、病院や施設に入れられたか、夜中は冷たいおむつに耐えていたはず。床ずれに苦しんでいたかも」

 毎田さんは、しみじみとそう語った。

 午前4時と同5時半にもへルパーが体位交換に来る。看護師やヘルパーが毎田さん宅を訪ねる回数は1日平均9回。「熱がある」「耳だれができた。軟膏(なんこう)が必要」などの日々の情報は、実方さんを通じ、他の看護師やへルパーに引き継ぐ。

 気持ちが前向きになり、一昨年、ハワイに渡って初めて海で泳ぎ、今年7月にはイルカと泳いだ。

 実方さんはこの夜、毎田さんら5人の患者の元を計16回訪れた。その合間を縫って、病状の急変などで緊急対応の依頼があった患者宅も3軒訪問。たんの吸引や、医師の指示で痛み止めの麻薬の注射をした。

 「重い障害があっても、自宅でその人らしく過ごしてもらう。寝かせきりにはさせない」。実方さんはきっぱりと言った。

 訪問看護ステーションの夜間・休日の態勢 24時間態勢をとるのは全体の約8割で、当番の看護師が自宅待機し、必要に応じて電話で応対するのが一般的。健和会のように夜間に巡回サービスを行う施設は非常に少ない。同会では3施設(常勤計18人、非常勤計7人)が集まって当直を置き、巡回などに当たる。 <続く>

(2007年12月4日付 読売新聞)

続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20071204-OYT8T00053.htm

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