2007年12月16日日曜日

医療ルネサンス

在宅のデザイン 訪問看護

基幹病院が独自のチーム

 浅間山のふもとの高原に広がる長野県佐久地方。この地域の基幹病院である佐久総合病院(佐久市)は、5か所の訪問看護ステーションを運営し、患者の在宅療養を支える。

 その一つ「訪問看護ステーションのざわ」の看護師、篠原富枝さん(58)は、週2回、同市内の小林敏男さん(72)を訪問する。胸から下がマヒしている小林さんは、要介護度が最も重い「5」。2003年に同病院を退院し、在宅療養を始めた。

 マヒのため思うように排尿できず、膀胱(ぼうこう)から直接チューブで尿を抜く膀胱ろうを設けている。篠原さんは、チューブの交換や周囲の消毒をし、尿路感染に気を配る。放置すれば、腎臓の機能が低下し、全身の感染症に進みかねないからだ。

 尿の色が濃い茶色に近くなり、熱が平熱より1度以上高い時は、すぐに同病院の「地域ケア科」に連絡する。同科の医師で主治医の北沢彰浩さん(42)が、月1回の訪問のほか、必要に応じて駆けつける。

 地域ケア科とは耳慣れない診療科だが、在宅医療を担当する同病院独自の部門だ。

 17人の医師(他の診療科と兼務)が所属し、東京23区の広さに匹敵する佐久市と佐久穂町の在宅患者計357人(昨年度)を受け持つ。同科専任の4人の看護師が、訪問看護ステーションから患者の容体などの情報を集め、医師の訪問日程を調整する。

 訪問看護を利用して在宅療養するには、訪問看護師が患者の状態の情報を主治医とやり取りするなどの連携が大切だが、多くの地域の訪問看護ステーションでは、利用者の患者が別々にかかっている様々な病院や診療所の医師と情報交換するのは容易ではない。

 これに対し、佐久総合病院では、地域ケア科が訪問看護ステーションの「司令塔」の役割を果たす。

 小林さんは、尿路感染の兆しがあるたびに、これまでに10回、同科の在宅支援病棟(約40床)に短期入院し、悪化を防いできた。在宅患者の容体が悪化した場合などに入院する病棟だ。

 「病院が在宅医療の拠点となっているので、医師と連携しやすく、安心感が大きい」と篠原さんは言う。

 佐久総合病院は、限られた医師、看護師で広い地域の在宅医療を行うため、1994年にこのシステムを導入した。しかし、国公立病院を運営する自治体などが開設するステーションは少ない。

 地方の基幹病院が在宅医療の拠点となり、訪問看護ステーションと連携する仕組みを作る必要がある。(鈴木敦秋)

 (次回は「通院抗がん剤治療」です)

 訪問看護ステーションの開設者 厚生労働省によると、昨年10月現在、「医療法人」が44%で最も多い。次いで「営利法人(会社)」19%、各地域の看護協会を含む「社団・財団法人」15%、「社会福祉法人」9%。公立病院を持つ「地方公共団体」は4%にとどまる。 <続く>

2007年12月7日付 (読売新聞)

続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20071207-OYT8T00065.htm

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