2007年12月18日火曜日

医療ルネサンス

通院での抗がん剤

「生きがい」仕事と両立

 4年前に進行胃がんが見つかった仙台市の男性(57)は、毎週1回、市内の東北大病院化学療法センターに、抗がん剤治療のため通っている。医師の診察の後、2時間余りの点滴を終えると、午後からは、たいがい会社へと出勤する。建築の専門家として、ビル建設の検査や確認が主な仕事だ。

 主治医の腫瘍(しゅよう)内科教授、石岡千加史(ちかし)さんからは、「無理はしないように」と言われているが、30年余りをビル建設に携わってきただけに、仕事は何よりの生きがいだ。

 胃がんは2003年12月、会社の健診で見つかった。「下痢や便秘のような自覚症状は全くなかった」ものの、精密検査を受けたところ、がんは思いがけなく胃の外側にまで広がっていた。

 市内の別の病院で胃の全摘手術を受けた後、東北大病院に移って抗がん剤治療を始めた。最初の半年間は、飲み薬。一時、治療を休んだ後、昨年からは通院での点滴に変わった。

 副作用は抗がん剤の種類や個人による差も大きい。「今使っている薬は、特に治療の翌日に吐き気がしたり、だるくて動くのがしんどかったり」 このため、治療日を金曜にしてもらい、午後は体に負担をかけないデスクワーク。副作用の出る週末は体を休め、月曜日には現場へ。「職場の理解もあり、自分の体調に応じて仕事を続けられている」と話す。

 かつては入院が当たり前だった抗がん剤治療を、通院で行うことが増えてきた。2004年に通院治療センターを設けた同大病院では、最近は30床の専用ベッドで月延べ700人が抗がん剤治療を受け、入院での治療件数を上回っている。この男性のように、仕事を続けながら治療を受ける人も珍しくない。

 抗がん剤治療の対象となる肺がんや大腸がん、乳がんといったがん患者の増加に加え、石岡さんは「根拠なく多剤を併用していた治療法が見直されたり、吐き気や白血球減少といった副作用の対策が進んだりと、通院でも安全に抗がん剤治療を行うための医療側の経験が積み重ねられてきた」と話す。

 公的医療保険に加算が設けられたり、がんの拠点病院指定の要件に外来化学療法室の整備が盛り込まれたりしたことも、「抗がん剤治療は通院で」の流れを後押ししている。

 患者にとって、仕事や家族との触れあいといった日常生活を保ちながら、治療を受けられる意味は大きい。石岡さんは、「抗がん剤の専門医や薬剤師、看護師の養成をはじめ、患者が安心して治療を受けられる体制作りが急務だ」と話す。

 通院抗がん剤治療の施設基準 2002年度に保険加算が新設された。〈1〉ベッドやリクライニングチェアなどの専用病床を備えた治療室がある〈2〉専任の常勤看護師がいる〈3〉専任の常勤薬剤師がいる〈4〉患者の急変に備え、他施設との連携を含めた緊急入院体制があること、と定められている。

2007年12月11日付(読売新聞)

続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20071211-OYT8T00053.htm

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