2007年12月16日日曜日

医療ルネサンス

在宅のデザイン 訪問看護

呼吸リハビリ 二人三脚

 自宅に置いた酸素濃縮装置から、チューブで酸素が鼻に送り込まれる。それでも、会話するだけで、福岡県・小倉の阿部孫次郎さん(76)は息があがる。歩くと、肩を揺らして「ゼイゼイ」「ハアハア」と呼吸困難な状態になる。

 2004年、肺が空気を十分に取り込めなくなる肺気腫(きしゅ)や、難病の特発性間質性肺炎と診断された。狭心症などの持病もある。地元の霧ヶ丘つだ病院に通い、併設の訪問看護ステーションを利用するようになった。

 この病院は呼吸器疾患の専門病院。呼吸リハビリの専門スタッフに加え、訪問看護ステーションにも在宅呼吸ケアに詳しい看護師5人がそろう。

 週1回、阿部さん宅を訪ねる看護師、茅原京子さん(47)は、日本呼吸器学会など3学会が認定した「呼吸療法認定士」(約1万6000人)の資格を持つ。訪問看護師になって12年目のベテランだ。

 阿部さんは、「リハビリや気分転換のために」と家の中を歩き、酸素ボンベを積んだ車いすで、毎日2回、約300メートル離れた商店街まで往復する。

 「ゆっくり歩いてね。苦しかったら止まって」「口を閉じて、鼻から息を吸って下さい」……。茅原さんは、阿部さんが長時間、低酸素状態に陥らず、酸素を効率的に取り込んで楽に呼吸できるよう助言する。

 67キロと太り気味で、便通も悪い阿部さんは、さらに体重が増えたり、おなかが膨れたりすると、呼吸を支える横隔膜の動きが悪くなり、呼吸が一層苦しくなる。

 それを防ぐための生活指導も茅原さんの仕事だ。たんの状態、肺の音、指に着けた専用の機械で測る動脈血酸素飽和度など、細かな体調の変化も確かめる。

 最も気を配るのは、風邪などによる発熱。肺炎を起こせば、命にかかわる恐れがあるからだ。

 阿部さんは、熱が出ると手持ちの抗生剤を飲むが、息切れなどが「いつもよりきつい」と感じた時は、茅原さんらが駆けつける。血液検査で数値が高く、感染症の可能性があれば医師に相談する。こうした「二人三脚」が功を奏し、阿部さんはこの2年間、一度も入院せずに済んでいる。

 この訪問看護ステーションの約30人の利用者には、人工呼吸器を使う患者も多い。「在宅の患者さんの症状は多様で、症状の重い人も少なくない。それぞれの人の状態や生活に、個別に対応していくことが大切」と茅原さんは言う。

 「孫たちの成長する姿を見届けたい。私は、長生きしますよ」。阿部さんはそう力を込めた。

 呼吸リハビリ 慢性の呼吸器疾患の患者に対し、残された肺の機能を最大限に活用して、呼吸をできるだけ楽にするための治療法。〈1〉体操などによるリラックス法〈2〉たんを自分で出す方法〈3〉腹式呼吸などによる呼吸筋のトレーニング〈4〉運動療法――などを行う。 <続く>

2007年12月6日付 (読売新聞)

続きは・・・ http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20071206-OYT8T00072.htm

0 件のコメント: