2009年8月13日木曜日

知的障害者や高齢者の出所者…支援難航

刑務所から福祉施設へ、橋渡し機関は4県だけ

 刑務所を出所後、帰る先がない知的障害者や高齢者を、福祉施設などに橋渡しする支援機関「地域生活定着支援センター」の開設が進んでいない。
 厚生労働省は7月をめどに都道府県に設置を求めていたが、自治体側が業務の難しさや今後の負担増を懸念して足踏みしていることもあり、設置されたのはまだ4か所。同省は「全国で整備されて初めて連携できる」と早期の開設を呼びかけている。

「負担増」自治体は足踏み

 センターは、身元引受先のない知的障害者や高齢者が、出所後に生活の困窮から再び犯行に走ることを防ぐため、服役中から面接して希望を聞き取り、その人に合った福祉施設を紹介したり、ヘルパー派遣の手続きをとったりする。同省は各都道府県に対し、社会福祉法人に業務委託するなどしてセンターを整備するよう求め、今年度は委託先の人件費などとして1か所あたり1300万円を補助する。だが、これまでに補助金を申請したのは9県。うち事業を始めたのは長崎、静岡、山口、滋賀の4県にとどまっている。
 「たとえセンターを作っても、受け入れ先の福祉施設を見つけるのに苦労するのは目に見えている」。補助金を申請していない奈良県の担当者は言う。現在、同県内の知的障害者向けグループホームやケアホーム約40か所はほぼ満員。この担当者は、受け入れ先の調整は難しいと予想する。
 愛知県の担当者は「福祉施設への入所を希望している待機者がいる場合、再犯防止のためとはいえ、刑務所の出所者を優先的に入所させられるのか」と懸念する。同省は、センターの紹介で刑務所の出所者を受け入れた福祉施設には、障害者自立支援法に基づく報酬に特別加算(出所者1人につき1日6700円)を行う方針だが、福祉施設の理解が得られるかどうかは不透明な状況だ。
 また、「今後も国の補助が出るのか心配。途中で補助額が減ったり、『後は県の予算で』ということになったりしないか」(鳥取県の担当者)など、将来、自治体の財政負担が増すことを警戒する声もある。
 一方、7月にセンターの業務を開始した静岡県。県から業務を委託された社会福祉法人「あしたか太陽の丘」が静岡刑務所などと連携し、これまでに知的障害のある出所者1人について、生活保護やヘルパー派遣の手続きを行った。センターの男性スタッフ(61)は「刑務所と社会をつなぐ支援は必要。他県にもセンターが設置されないと、静岡刑務所を出た人が他県で再出発を希望した場合に連携できない」と訴える。
 法務省によると、2006年に刑務所を出所した約3万人のうち、親族などの引受先がなかったのは約7200人。この中で障害などにより自立困難な人は約1000人と推計される。
 知的障害者の刑事弁護の経験が豊富な辻川圭乃(たまの)弁護士は、「福祉が行き届かず、再び犯罪に至る出所者がいることを考えれば、地域福祉を担う自治体は、積極的に行き先のない出所者の支援にかかわってほしい」と話している。
2009年8月13日付(読売新聞)
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kyousei_news/20090813-OYT8T00606.htm

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