2007年11月18日日曜日

アトムと私 シリーズ

(10)入社前 ヘルパー探し難航
    「毎夜11時半」に21社が拒否

 マンションの出入り口に段差がない(スロープがあれば可)。共同玄関は自動扉。エレベーターがある。トイレの出入り口は、車いすの幅55センチより広い。アトムの入居が可能。会社に近い。近くに平面駐車場がある――。

 2006年末、読売新聞社の採用が決まり、勤務予定地の名古屋市内で家探しを始めた。自活しようとすると、住まいへの条件は多い。

 不動産業者に何十枚もの見取り図を見せてもらったが、実際に物件を見ようと思ったのは3か所だけ。トイレに段差がなく、間口を少し広げれば入ることができる建物に決め、改装して住むことにした。

 大学入学後、4度目の引っ越しになるが、毎回、住居探しには苦戦する。京都市内ではペット可のマンションを契約後、住民の間で「アトムの大きさが規約外」と問題になり、断られたこともあった。

 勤務にあたってヘルパーも新たに探す必要があった。朝食の用意と身支度の手助け、夕食と入浴の介助もお願いしなければならない。問い合わせた名古屋市中区障害者地域生活支援センターの松本幸子さんが「一つの業者では対応しきれないが、生活を応援したい」と間に立ち、事業所を探してくれた。

 問題は時間だった。新聞社の夜は遅い。「できるだけ遅くまで仕事をしたい」と、午後10時~11時半という条件にした。松本さんは24時間態勢の事業所にも片っ端から電話をかけたが、21社に断られたという。

 松本さんの努力で、最終的に五つの事業所が協力してくれることになった。ヘルパーの都合が悪くなった時は、その中の「菜の花指定居宅介護事業所」が調整役を引き受けてくれた。「女性ヘルパーは、行き帰りの防犯面などから、深夜に定期的に確保することは難しい。松本さんから連絡をもらった時も『毎日なんてまず無理。週のうち何回かなら』と答えるのが精いっぱいだった。だが、働く人を何とか助けたいと思った」と、同事業所管理者の丸山秀樹さんは振り返る。

 会社には、マイカー通勤を認めてもらった。学生時代は車いすをたたんで車内に積んでいたため、乗り降りの際は、家ではヘルパーに、学校では警備員らに手伝ってもらっていた。
 それでは仕事にならないと、車いすを屋根の上につり上げることができる機械を車に取り付けたが、車いすで乗り降りできる自宅近くの広い駐車場はどこもいっぱい。当面は介護タクシーに頼ることになった。

 社会人となるための生活環境すべてを整えられたわけではないが、できる限りのことをして入社に備えた。 

(2007年10月29日 読売新聞)

続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/feature/atom/fe_at_07102701.htm

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