(2)撮影 アングルとの闘い
「人に頼むのも技術」学んだ
誰もいない舞台にデジタルカメラを向け、シャッターを切ってみた。9月19日に開かれた秋の交通安全キャンペーンを取材するため、名古屋駅前の特設舞台に30分前から詰めた。
タレントのくまきりあさ美さんが一日署長を務め、オープンカーでパレードする。介助犬のアトムと一緒に人ごみの中に入ると、アトムが踏まれるなどの危険があるため、会社に待機させ、一人で取材に来た。
車いすの私にとって、問題は写真だった。車いすに座った私の背丈は、1メートル30に満たない。聴衆の後ろにいては、人のお尻しか撮影できない。何度もカメラを構えた結果、舞台の上手側に陣取った。
マイクの前に、くまきりさんが立った。カメラを向けたが、アングルが低く、たすきの「一日署長」の字が見えない。舞台の反対側に回っている間にあいさつは終わってしまった。
「まずい」。パレードと一緒の移動は難しいため、500メートルほど先のゴール近くで待機した。くまきりさんが車から降りると、人が押し寄せ、近付くことができない。カメラを構えても、くまきりさんの帽子がちらりと見えるだけ。何とか前へ行こうとしていると、「写真撮りたいんでしょう。押してあげようか」と後ろから声がかかった。
通りがかりの女性らしい。その声で、くまきりさんの隣にいた中村署長の梶浦正俊さんが気付き、場所を空けてくれた。
しかし、すぐに撮影、とはいかない。指が自由に動かないので、右手でカメラを支え、左手の手のひらでシャッターを押す。近すぎるし、低すぎる気がしたが、それ以上は動けなかった。
カメラは厚さ3センチの手のひらサイズだ。支社写真課の中根新太郎課長が入社時、「一眼レフだと重いので小さい方がいい。でもその持ち方だと、薄すぎても、ダメだ」と探してくれた。さらに、シャッターボタンの上にシリコーンのシールを張り、押しやすいようにしてもらった。
アイススケート教室の取材では、柵をまたいでリンク内に入ったテレビカメラマンが、着ぐるみのキャラクターと見学者の表情を撮影していたが、私は移動できず悔しい思いをした。
ぶれたりピントが合っていなかったりで、撮り直しも何度か経験した。上司からは「自分で撮れないと思ったら、人に頼めばいい。頼む技術も磨いて」と言われた。
ハンデは承知のはずだが、カメラとの悪戦苦闘は続く。へこたれることなく、「記事を書くことで誰かの役に立ちたい」と思った初心を忘れずに、少しずつ前に進んでいきたい。
(2007年10月17日 読売新聞)
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/feature/atom/fe_at_07101701.htm
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