2008年4月24日木曜日

命あれば 「限界ない」

 107人が死亡した2005年4月のJR福知山線脱線事故から25日で3年。重傷を負い、両脚を切断した林浩輝さん(22)(兵庫県伊丹市)は今春、同志社大(京都市)を卒業し、東京で社会人生活のスタートを切った。
 通学のため伊丹駅から乗った1両目が、線路脇のマンションに突っ込んで大破した。原形を失った車内で地獄を見た。滴り落ちる血、息絶える乗客――。22時間も圧迫された両脚は壊死(えし)し、切断するしかなかった。病室で目覚めて知ったその事実に、「死んだ方がよかった」と絶望した。
 11か月に及ぶ入院生活。毎夜、39度の熱に襲われた。だが、友人たちは「どうなろうと、林は林だから」と励ましてくれた。リハビリを始めると、「限界はない」と実感できた。車いす、義足歩行、障害者用運転免許の取得。一つずつ克服する過程で前向きになれた。「母を泣かせたくない」と、家族には一度も涙を見せなかった。
 事故から1年後、キャンパスに戻った。次の春は就職活動に挑み、東京の広告会社に内定した。市民や高校生に向けて講演も重ねた。「生かされた命」への感謝を語り、「一日一日を悔いなく真剣に歩んで」と呼びかけてきた。
 東京で始まった一人暮らし。三たび巡る「4・25」は、都内の勤務先で、静かに犠牲者の冥福(めいふく)を祈る。「あの時味わった苦しみを思えば、どんなことも頑張れる」。自立して精いっぱい働く。それが、支えてくれた人たちへの恩返しだと思う。
続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/zoomup/zo_080423_01.htm
2008年4月23日付 (読売新聞)

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