2008年1月18日金曜日

被災地離れ10年 「命」生徒に語り続ける

教え子亡くした玉川高・前畑教諭 映像流し授業

 阪神大震災の当時、兵庫県西宮市の中学校で教え子を亡くし、その後、県内の高校に職場を移してからも教壇で震災を語り続けている教諭がいる。県立玉川高校(草津市)の前畑聡さん(39)(大津市)。被災地を離れて10年余りが過ぎたが、1月になると生徒たちにあの惨禍を伝えてきた。今年も担任する2年生34人に、あの時学んだ命の重みについて語った。

 授業は15日、同高の視聴覚室で行われた。前畑さんはまず、被災直後の街の様子をとらえた映像を流した。猛火に包まれる商店街、横倒しになった高速道路、肉親が家屋の下敷きになりながら何もできずに打ちひしがれる被災者の姿……。その後、西宮市立瓦木中に勤務していた自らの震災体験を語った。

 当時顧問だった吹奏楽部で、2年藤原安希子さん(当時14歳)と、姉で同部OBの睦子さん(同17歳)の2人を亡くした。「2人の遺体と対面した時、生まれて初めて、代わってやりたいという感情を知った」。その言葉に静かに聞いていた生徒たちは息をのんだ。

 西宮市を離れて、滋賀県で高校教諭になったのは1997年春から。「被災地を離れたのに震災にこだわり続ける自分は、周囲にどう映るだろう」。当初はそんな不安もあったが、そのうち時がたっても、震災の話を聞く生徒の真剣な表情に変わりはないと感じた。「命の尊さを考えるのに、被災地の内も外もない」。そう思い、続けてきた。

 前畑さんは「震災では生きたくても生きられなかった人が大勢いる。どうか君たちは命を大事にして、毎日を一生懸命に生きていってほしい」と力を込めた。

 授業を聞いた武田絵理さん(17)は「滋賀でもタンスが倒れそうになったと親から聞かされていたけれど、衝撃のすさまじさがよく分かった」と言い、初宿(しやけ)未優さん(16)は「平穏に過ごせるありがたさをかみしめたいと思う」と話していた。

2008年1月18日付 (読売新聞)

続きは・・・http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20080117-OYT8T00646.htm

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